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「驚くことでも理不尽でもねえよ。これは、この地域の数千、数百年レベルでの『ただの』地震サイクルだ。そろそろどこもかしこも動くころだった。それがいま起きている。それだけだ」
巌は軽く柚月の額を小突く。
「いつもいっているだろう? 地球は人間の都合で動いちゃいねえってよ」
うん、とうなずく。だから地震を防ぐことはできなくて、できるのは備えることだけ。
「だから柚月、動け」
父の目を真っすぐに見る。
「動いていれば怖がっている暇はない。お前はそれができるだろう? だが世の中ではな。できないやつの方が多いんだ。助けてやれ」
頼んだぞ、といわれて腹をくくる。
「わかった」
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