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荷物を運び終えたらしく、手にパウチパックのドリンクを二つ持っていた。
「やっぱり休んでない。こんな炎天下で突っ立っていたら熱中症になるっしょ」
小清水は乳酸菌飲料をひとつ柚月へ手渡すと先にテントへ入っていく。柚月もおとなしくそれに続き、小清水の隣へ腰をおろした。
「いい天気だね」
「はい」
「これって星印のカツモトに味が似てるよね。ちょっと薄いけどさ」
「はい」
「あれは牛乳と同じようなもんだから、こういうパックは無理かねえ」
「はい」
もう、と小清水は柚月の背中を叩く。
「しっかりおしよ。いっとくけどね。阿寒さんは絶対に柚月ちゃんのことが好きだからね」
はいっ? と声が裏返る。
「見ていればわかるから。柚月ちゃんがどう思っていようとも、それだけは確かだから。だからなにがあってもあの人は気合で帰ってくるから。大丈夫だから。信じておやりよ」
鼻先が熱くなる。
「そもそもまだ阿寒さんが出かけて二時間もたってないよ。いまからそんなんで、柚月ちゃん、あんた大丈夫かい?」
あー……、と両手で顔をおおう。本当だ。情けない。小清水が小突く。今度は優しい小突きかただ。
「信じておやりって。……なーんかさあー。いいねえー」
「え?」
「そういうやりとりがさー。まぶしいねえー」
「もう、小清水さんってば」
頬を膨らませて柚月はパウチパックの栓を開ける。そしてそれを口へ含もうとした、そのときだった。
うおおい、と複数人の声が聞こえた。
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