炎舞(えんぶ)

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 堂島は柏木のかたわらにいた大野に声をかけた。黒字に白抜きで『舞』という毛筆の文字がプリントされたTシャツを身に着けている。今回の公演のために(そろ)いで作ったものらしく、裏方も接客係も、スタッフは全員がこのシャツを着ていた。 「ええ、舞台監督の大野です」  大野は落ち着いた口調で答えた。 「警視庁捜査一課で警部補をやっております、堂島健吾と申します。この舞踊団の代表者はどなたですか?」 「座長が平塚藤花、実際の運営は、彼女の実質的な夫で演出家の倉田誠治がやっていました。彼は今彼女に付き添って病院に行っています。他には古顔の私が一応幹部として、年間の活動計画などの主要な会議には参加することになっていました」 「運営面から舞台の進行までお分かりの方にご協力いただけるのは心強い。よろしくお願い致します」 「いえ、こちらこそよろしくお願いします」  四人の警察官のうち三人は現場の検証にまわり、村田という名の巡査部長だけが堂島のもとに残った。 「後から前園って鑑識が来るから、現場はそのままに。とにかく団員達の話を聞いておいてくれ」
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