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「助かります。資料の準備は、鑑識が指紋を取り終えてからお願いします。不審な者がここの機材に触れた可能性がありますから」
「わかりました」
大野がそう答えた時、彼のスマートホンに電話が入った。
「倉田からだ。失礼します」
大野は着信画面を見てそう言いながら、柏木達から数歩の距離を取って電話に出た。
「倉田? ああ、俺だ。どうだ藤花さん。そうか……。こっちは警察が来て、現場を調べている。ああ、まだしばらくかかりそうだ……」
数分のやり取りの後に通話を切ると、大野は柏木達のもとに戻って通話の内容を告げた。
「藤花さんが亡くなりました。頸椎骨折と脳挫傷で、ほぼ即死の状態だったらしい。今しがた、医師が最終的に死亡を確認したそうです」
「残念です。類い稀な才能の持ち主でいらしたのに」と堂島が言った。
「ええ、まったく……。倉田はいったんこちらに顔を出すとのことです。すぐそこの慶大病院ですから、十分もすれば戻ると思います」
会話はそこで途絶え、重苦しい沈黙がその場を支配した。やがて、堂島が柏木に尋ねた。
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