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「彼女とつき合っていたのは五年程前でしたかね。彼女の公演のための曲を作って注目を浴び、映画音楽を手がけるようになった。最近では海外からの依頼まであるそうですよ」
「で塚本は今どちらに?」
「出演者の控室です。聞き取りを行うのは少し待っていただけますか? かなりショックを受けていますので」
「わかりました。デュオを踊っている時、迫の状態はどうだったか、こちらが確かめたいのはほぼその一点ですし、そう急ぐ必要はありません。話は戻りますが、恋人同士が敵対することは?」
「ないと思います。彼女は複数の相手と同時に交際することはしませんから。『すべてを汲み尽くせ』、それが彼女の恋愛のモットーですね。そして時が来ればきれいに別れ、倉田のもとでしばし休息した後、新たな恋を始める……。別れた後で彼女を憎んでいる者はいないと思います。里見のように、皆彼女の良き協力者なっていますから。今や国際的バレエダンサーのⅯ・Nや歌舞伎役者のS・Hだって、彼女が共演しようと声をかければすっ飛んできますよ」
「ということは、彼らも藤花さんと?」
堂島が驚きの声を上げた。
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