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「彼女の夫であるということは、彼女と恋人との関係を容認することと同じなんですよ。藤花は、恋愛の延長として結婚を望み、家庭を築いて子を生す、といった存在ではない。常に誰かを愛し、霊感に震え、舞う……。彼女にとっては、それが生きるということなんです」
「ありがとうございます。芸術家を理解するのは手に余りますが、あなたがいらしたからこそ平塚藤花さんの芸術があったことだけは、私にもわかったように思います。話は変わりますが、公演中はどちらに? やはり大野さんとご一緒でしたか?」
「いえ、あのあたりの席で見ていました」
倉田はそう言いながら柏木達の席より五列ほど後ろの座席を指差した。
「本番が始まってしまえば、演出家はお役御免ですからね。観客の一人として舞台を観るのが習慣なんです」
「よくわかりました。どの質問にも誠実にお答えいただいて、本当に助かりました」と堂島は言った。
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