8人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「超音波にストローが共振しているんだ。僕らには聞こえないけれど、かなりの音量だろうね。大野さんが非圧縮の音声を入れてくれていて助かったよ。圧縮フォーマットの音だったら、可聴域でカットされてしまうから気づけなかった」
柏木はタイムコードをメモすると、マルチ画面を個々のカメラの画像に切り替えて、一つ一つ丹念にチェックしていった。
「あったぞ! これがあの時触れていた〈決定的なもの〉の正体なんだ」
柏木は声を弾ませてそう言うと、画面の奥の方にかろうじて写りこんでいた、篝火のまわりを飛び交う蛾の群れを指差した
翌日の午後七時、柏木は澤村翠とともに新宿御苑の舞台を再び訪れた。彼から連絡を受けて、堂島警部補がもう一度現場検証を実施する決定を下したのだった。
「柏木さん、お待ちしていました。澤村さんもご足労いただきありがとうございます」
二人を舞台上で迎える堂島の傍らには、新宿署の村田巡査部長と、演出家の倉田誠治の姿があった。
「今、大野氏が最後の調整を行っているところです。まもなく始められますよ」
最初のコメントを投稿しよう!