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「倉田さんです。鑑識の報告によると、伴奏音楽のデータが入ったUSBメモリーには、倉田さんの指紋しか残されていなかった。以前うかがった大野さんのお話しでは、USBメモリーは大野さんが素手でコントロールユニットに差し込んだはずなのにです。つまり、その後で倉田さんが、超音波信号の入ったメモリーに差し替えたことになる。同じメーカーの製品で外見は全く同じですが、別物なんです。倉田さんは演出家という立場上、必要な音素材は簡単に用意できたし、音源を編集するスタジオだっていくらでもご存じのはずだ」
「ええ、おっしゃる通りです」と、倉田はうなずきながら答えた。
「ですが、僕に解明できたのはここまでです。残された映像を見ると、藤花さんは事故に遭うことを予期していたようでした。それどころか、最期の瞬間には微笑みさえ浮かべていた……。倉田さん、藤花さんは自殺で、あなたはそれに手を貸した、ということなんですか?」
「いえ、違います。私は年甲斐もなく嫉妬にかられ、今回の犯罪を思いついた」
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