炎舞(えんぶ)

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「しかし、藤花さんの浮気はいつものことじゃないか、なんでまた今回に限って」と大野が声を上げた。 「別に言い訳するつもりはないんだが……」  倉田は舞台中央にできた穴の上で燃え盛る炎のホログラムに目をやりながら話し始めた。 「彼女はあえて僕の嫉妬心をかき立てようとしていたような気がする。あの演技力で、塚本との親密な関係をこちらに見せつけていたんだ。もっとも、これは後から考えたことで、彼女が転落するまではひたすら嫉妬に狂い、死を願っていたよ」  倉田はそこで言葉を切ると、柏木と堂島のほうに向き直った。 「柏木さん、堂島さん、お手を(わずら)わせて申し訳ありませんでした。すぐに真相をお話しすべきだったんですが、考えをまとめることができなくて……」 「倉田さんは誠実だったと思いますよ。証拠を隠滅(いんめつ)する機会はいくらでもあったはずなのに、何もなさらなかった。僕にはやはり、今回の事件は藤花さんの自殺に近い性質のものだったような気がします。彼女がなぜ死を望んだのか、何か思い当たることはありませんか?」
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