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「まだよくわからない。ただ、何かがおかしいような気がしてね。事件性の有無で警察の調べ方も変わると思ったから、とりあえず堂島さんに電話したんだ。彼が来るまでに、もう少し頭の中を整理してみるよ。とにかく、転落した平塚さんが無事だといいんだけれど」
「ええ、本当に……」
人気のなくなった舞台に目を遣りながら、翠は沈んだ口調で答えた。
平塚藤花を乗せた救急車が出発するのと入れ替わりに、新宿署の警察官四名と堂島が到着した。柏木と翠は堂島の指示に従って、舞踊団の幹部の一人だという四十代半ばの男とともに会場の入り口で堂島達を待っていた。男は大野清高という名で、舞踊団の結成当初から舞台監督を務めてきたとのことだった。
「澤村さんもご一緒でしたか、お久しぶりです。せっかくの観劇がとんだことになりましたね」
「ええ、突然の出来事で、本当に驚きました」
「そちらは舞踊団の方ですね」
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