NO color 1/24

2/3
前へ
/3ページ
次へ
ーーーーちりん。 「おばあちゃあん」 縁側に寝転び広げた画用紙のうえ、顰めっ面をした幼子の声が響き渡る。 小さく膨よかな手から、二つの色鉛筆が手放された。 「はいはい、なぁに?」 「これ、壊れちゃったよぉ。けずれない…」 孫娘の訴えに、老女は視線を落とす。 「ああ、電池が切れたんだね。 ちょっと待ってて………こっちで削ってあげる。」 「どっこいせ、」と言いながら本棚の横、黒く重々しい昔ながらの鉛筆削り器を手に取った。 「これねぇ、おばあちゃんが子供の時からあるんだよ、まだまだ現役……すごいだろ? 確かおばあちゃんが女学校に行く前に……」 ソワソワとする孫娘のうえで、風鈴がちりん、と音を鳴らす。 「ごめんごめん。…ほら、削って欲しい色持ってきな」 迷う事なく、二本の色鉛筆を差し出す。 「この色……珍しいねぇ、何を描いたの?」 幼子は祖母の問いかけに、ニカッと屈託の無い笑顔を見せる。 開けられた口の中、並びで歯の無い空いた隙間から、細い風が通りぬけた。 「あのねぇ、このまえ。動物園で見た、 パンダさん」 END
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加