幸せならそれでよかった

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「よっ、高校卒業ぶりじゃん」 帽子を深めに被るのは、野球選手だからか。 そういえば、隼太をテレビでみることはあるけど、野球選手になってから生で見るのをはじめてだ。 電話に出た隼太は今ちょうど近くにいるから待っとけと言って本当にすぐにきてくれた。 昔からフットワーク軽いよなぁって思う。 「で?どうしたんだよ。急に電話なんて」 すぐ近くの居酒屋に入って、枝豆を食べながら彼は「卒業してから1度も電話くれなかったくせに」って笑う。 「うーん、仕事に疲れて癒して欲しくて彼氏のとこ行ったら彼氏は浮気してた」 「うわ、悲惨」 隼太は本当に表情が豊かで嫌いな虫でも見たかのような顔になる。 「なんかもうヤダなぁって思ってたら、隼太のストーリーが流れてきたの。こっちにいるんだ……って思ったら衝動的に電話してた」 「あれか、幸せじゃ無くなったから電話したんだ」 「……ん?」 ビールを口に含みながら隼太の言葉には首を傾げる。 「言ったじゃん。幸せじゃないと思ったら俺に電話しろって」 「そんなこと言った!?」 「言ったよ」 「いつ!?」 あまりにも記憶になさすぎて、身を乗り出してしまう。 「そりゃ、卒業式」 「そりゃ……?」 「俺ら連絡先交換したの卒業式だよ」 「……そうだっけ?」 振り返ってみるけど、たしかに3年間同じクラスだったし、家も近くていつでも会えるし得に連絡先の交換は必要なかったように思える。
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