エピローグ

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 私とセヴェリは、ペリウィンクル王立魔法学園を卒業して間もなく結婚式を挙げた。  一日でも早く一緒に過ごしたいから、とセヴェリが望んで早めてくれたのだ。  今、私とセヴェリは王都にある教会にいて。  私たちの結婚式が、始まったところだ。 「ユスティーナ様、今からでもまだ遅くないですわ。わたくしの兄と結婚するのはいかがでしょうか?」  いったいどれほど泣いたのか、アレクサンドラ様は目が真っ赤になっている。  そんな彼女を気遣わしく励ましているのは、彼女の新しい婚約者だ。    実は、婚約していた国王陛下がアレクサンドラ様のことを不憫に思い、婚約を破棄し、彼の親戚に当たる公爵家の令息と婚約させた。  彼らが結婚をすると同時に、王位を譲るそうだ。  アレクサンドラ様のことは婚約した当初から娘のように思っていたようで。  彼女には年が近い伴侶と結婚させてあげたいと考えていたそうだ。  国王陛下も新しい婚約者も優しい方で、アレクサンドラ様を大切にしてくれているようで安心した。 「アレクサンドラ様、私を気にかけてくださっているのは嬉しいのですが、私はセヴェリと一緒にいたいのです」 「う、ううっ……」  卒業するまでの間も、アレクサンドラ様は度々、王太子殿下との結婚を勧めてきた。  時には王太子殿下ご本人もやって来て、アレクサンドラ様の話に便乗してセヴェリを揶揄っていたのだ。  アレクサンドラ様は私を家族にしたくて、セヴェリが子どもに戻ってしまう前から、私と婚約破棄するようセヴェリに直談判していたらしい。  そのためか、アレクサンドラ様が私の近くにいると、セヴェリは表情を曇らせるのだ。 「たとえ結婚しても、アレクサンドラが大切な友人であることに変わりはありませんから」 「ううっ……ユスティーナ様……!」  アレクサンドラ様が抱きつこうとすると、セヴェリが素早く私を引き寄せる。 「招待された結婚式で花嫁を奪うのはいかがなものかと思うのですが?」 「覚えておくといいですわ。あなたが結婚するユスティーナ様は、それほど魅力あふれた素晴らしい方ですのよ」 「言われなくても存じていますよ」  そのまま私を抱き上げ、足早にアレクサンドラ様から遠ざかった。  セヴェリと目線が近くなり、美しい横顔が間近に迫る。  教会のステンドグラスから差し込む光に照らされた瞳は言葉を尽くしても言い表せないほど綺麗で。  じっと見つめていたせいで、セヴェリに気付かれてしまう。  セヴェリの口元が緩く弧を描いた。 「ユスティーナ、今日もとても美しいです。式の段取りを忘れてしまいそうになるほど見惚れてしまいます」 「……っありがとうございます。セヴェリにそう言ってもらえるよう、頑張って準備しましたから嬉しいです」 「その笑顔と言葉は反則ですよ。可愛すぎて、本当に段取りを忘れてしまいそうです」  頬を赤く染めて告白してくれるのが可愛らしい。  頬に触れてみると、掌に熱が伝わる。  セヴェリの顔が近づき、唇が触れ合った。  一部始終を見ていた招待客たちが、割れるような拍手を送ってくれる。  その最中、教会の外から、ドラゴンの咆哮が聞こえてきた。  まるで歌を歌っているような、のびやかな声だ。    外に出てみると、白い大きなドラゴンが上空を飛んでいる。  純白の鱗が陽の光を受けてキラキラと幻想的に輝いている様子は目を瞠るほど美しい。 「――いい始まりになりましたね。ドラゴンが祝福してくれる家門は、この先もずっと栄えるそうですよ」  神殿長はそう言って、にこにこと微笑んでいる。 「もしかしたら、あのドラゴンは、私たちが上手くいっているのか心配で、見に来てくれたのかもしれませんね」 「私も、セヴェリと同じことを考えていました」  私たちは顔を見合わせて笑った。    その後、私たちは天使のように愛らしい男の子を授かり――。  セヴェリと、子どものセヴェリと瓜二つの息子が、二人して毎日告白してくれるようになるのだった。 (結)
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