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<こんにちは、元気です>
翔吾はメールの着信音に飛び上がり恐る恐る受信フォルダを開いて見た。そこには秋良からの返信が届いており翔吾はそれだけで拳を握りしめた。遂にエベレスト山脈の登山道を一歩踏み出したのだ。
「返事きたーーーーーーー!」
心の声ABCD(やっぱり秋良は俺に惚れている!)
心の声E(なんでおまえはそう単純なん)
自分大好き俺さま気質の特徴として愛されて当然というスペックが備わっている。太々しい事この上ないがその根底には愛に飢えた寂しがりという深層心理が働きこれは得てして聖マリアンヌ愛児園での暮らしがそうさせているのかもしれなかった。
<もう仕事は終わりましたか>
<終わりました>
秋良とすれば翔吾の意図が分からなかった。そもそも自身のメールアドレスが何処から漏洩したのかと営業フロアを見渡すと眼鏡を掛けた男性社員が平謝りをした。
「あぁ、あなた」
「はい、毎朝頭を叩かれています」
己の平安と引き換えにメールアドレスを献上したのだと白状した。
「ごめん!」
「緊急連絡先で登録したものだし問題ないわ」
「伊東さん、ごめん!」
「そんなに謝らないでお互い大変ね」
「本当にごめん!」
その間も秋良の携帯電話には翔吾からの短文メッセージが次々に届きメール受信フォルダは埋め尽くされた。
<ごはん何食べた>
<コンビニ弁当>
<俺、牛丼>
<今何してるの>
<髪の毛乾かしてる>
<俺もシャワーすっかな>
「あぁ、しろよ!さっさとシャワーして日本海に流れてしまえ!」
秋良は携帯電話の電源を切った。
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