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翌日
「ねぇ、伊藤さんちょっと良いかしら」
秋良に見下ろされた翔吾はその気迫に尻込みした。
心の声一同(また怒ってるーーー!)
「お、おう。この仕事終わってからで良いか」
「昼休憩でも良いわ、12:30に屋上の芝生広場で待ってる」
「あ、あう」
心の声一同(あ、あうってなんだよ!なにビビってんだよ!)
秋良に呼び出された翔吾はエベレスト山脈の一合目に到達するか否かの瀬戸際かと思われたがあの雰囲気はそんな甘ったるいものでは無かった。
心の声A(俺、なにか地雷踏んだか!)
心の声B(メールが面倒だったんじゃないですか)
心の声C(LINEじゃないんだし)
心の声D(あー、それな)
心の声E(LINE交換すれば良いんじゃね)
心の声一同(そんなん恥ずかしくて言えるかよ!)
昼休憩のチャイムが鳴った。唾を呑み込み足を一歩前に出したが開放的な屋上への階段が死刑台へ向かうそれに近く足取りは自然に重くなった。
(ーーーお、俺、だっせぇ)
緊張で心臓が破裂しそうだった。然し乍ら階下へ向かう女性社員とすれ違うと「えーー、ほら営業部の」「伊藤さん格好良いね」「営業部羨ましいなぁ」等と囁かれば良い気なもので幾許かの自信を取り戻した。
(よし!)
ばんっ
扉を開けると真正面のベンチに秋良が脚を組んで座っていた。やはりなにか鬼気迫るものを感じ翔吾は慄いた。
「お、おう」
「どうぞ」
秋良はベンチの隣を指して座るように促した。翔吾はベンチの一番端に座ると両膝に手を置いて縮こまった。
「なん、なんだよ」
秋良は翔吾に向き直った。
「あのメールはなに」
「なにって」
「元気かどうかなんて見れば分かるでしょう!」
「飯はなにを食ったか分からないじゃねぇか」
「私がなにを食べても伊藤さんに関係ないわよね!」
「ーーーーぐっ!」
心の声一同(頑張れ!)
そこで秋良が思わぬ提案をした。
「伊藤さん、LINE交換しましょう」
「えーーーー!えっ!」
「なに、そんなに驚く事なの」
「えっ、いや、そんな事ないし」
ぴろーーん
心の声一同(ふぉぉぉぉぉ!)
念願のLINE交換、ところが翔吾が喜んだのも束の間、秋良の言葉はエベレスト山脈の永久凍土より冷たかった。LINEメッセージは必要事項以外は送って来ない事、送って来ても既読無視、LINE通話は拒否というものだった。
「な、なんで」
「なにか文句ある」
「それじゃLINE交換の意味が無いんじゃ」
翔吾の顔面偏差値は東京大学か京都大学かと例えられる程に持て囃され、これまで女性社員に理由なく嫌われた事は皆無だった。
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