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翔吾はLINEメッセージを送ると両膝に握り拳を作り携帯電話を凝視した。緑の画面に表示されたメッセージが既読になり喉仏が上下した。
思い出しました
既読
(は?)
塩対応は健在で素っ気の無いメッセージが返ってきたがこの遣り取りは有意義なものと判断され既読無視対象外だった。安堵のため息が漏れた。
伊東秋良さんは俺の姉ですか
既読
(馬鹿なの?)
安堵したのも束の間、秋良が姉である事が全否定された。そもそも10月30日に待ち合わせたいとう姓の女子が姉であるという説は稚拙な(といっても高等学校1年生)自分が考え出したものでしかなかった。
あなたは誰ですか
既読
(伊東秋良)
ごめんなさい
既読
(なにが)
行かなくて
既読
(何処に)
そこで可愛らしい猫が [アホちゃいますか] と突っ込むポーズのLINEスタンプが送られて来た。
ごめん
既読
その後秋良からメッセージが返って来る事はなかった。8年経った今もこの件に関してはご立腹の様子だった。
(しかも名前を忘れるとかマジ最悪じゃね?)
昼休憩が終わり気不味い面持ちでデスクに向かったが秋良は何事も無かったように隣の女性社員と会話し、翔吾に笑顔で語り掛けて来た。
(これ、絶対作り笑いだよな)
翔吾の書類を受け取る指先は震え口元は引き攣った。
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