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歓迎会から2週間経ったある日、秋良は村瀬 寿 係長のデスクに呼ばれた。然し乍らそれは普段見られない厳しい表情で秋良を凝視した。
「伊東さん」
「はい」
「ここ暫く伊東さんの書類に不備が多いの。如何しちゃったの」
「不備、ですか」
「訂正印、押しまくりじゃない」
デスクには訂正の二重線と伊東の訂正印が押された新規申し込み用紙が何枚も広げられた。
(ーーーこんな覚えない)
「ほら、この申し込み用紙見てご覧なさい。お客様の住所が見えないわ」
「申し訳ありません」
「気を付けてね」
秋良はその新規申し込み用紙を手にデスクに戻った。隣の女性社員にも「分からない事があったら確認して」そう言われた。秋良にすれば身に覚えの無い事ばかりだった。
「ちょっーーーお手洗い」
これまで自分の業務には責任を持って望んで来た。
(ーーーなんで)
けれどその自信が傲慢さに繋がったのかも知れない。思わず目頭が熱くなった秋良はデスクを離れた。その後ろ姿を翔吾と高坂壱成の視線が追い一足早く高坂壱成が席を立った。
心の声A(あっ、また先を越された!)
心の声B(なにのんびり座っているんですか!)
心の声一同(早く立て!)
翔吾は意を決し勢いを付けて椅子から立ち上がると小走りで営業部フロアを出た。左右を見渡すとそこに高坂壱成の背中が見えた。
心の声C(今度こそ、踏ん張れ!)
翔吾は手を伸ばすと高坂壱成の腕を掴んだ。
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