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「おまえ、髪、短いから乾くの早いな」
「うん」
「もっとなんか喋れよ」
「うん」
秋良がシャワーを浴び終えると翔吾がドライヤーを片手に待ち構えていた。「濡れたままだと髪の毛が痛む」など細かい事を言い出し終いには「そこに座れ、俺が乾かす」と秋良を床に座らせた。
「気持ち良い」
「だろ、さすが俺」
ヘアサロンのスタッフに比べれば随分と手荒だが髪を透かす翔吾の指先が秋良の緊張を綻ばせた。ところが「俺がもっと気持ち良くさせる」と言い出すものだから秋良の身体は石像の様に硬った。
「大丈夫だって、そんなにビビんなよ」
「そんな事言っても」
「大丈夫、俺も初めてだし」
「ーーーーーはぁ!?」
この翔吾さまは太々しく、遠慮なく、相手を見下し、偉そう、致命的な欠点は絶対、自分から謝らないので付き合った女性は3人ほど居たがそのどれもがキス止まりで先に進まず喧嘩別れを繰り返したと言った。
「俺さま童貞だったのね」
「変な言い方すんな」
「意外すぎて会社で言いふらしちゃいそう」
「大丈夫だ、今夜で卒業だ」
「ーーーーなんかやだ」
「お互い操を守って来たと思えば感無量じゃん」
「操って、演歌じゃないんだから」
翔吾はドライヤーのスイッチを切ると部屋のシーリングライトの明かりを消した。
「途中で嫌になったら言え」
「嫌って言っても続けて」
秋良の指先が翔吾の太腿に触れ、翔吾は秋良のTシャツをゆっくりと捲り上げた。2人は互いにTシャツを脱がし合いベッドに腰掛けると口付けを交わした。
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