極道の娘

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 正直、好みのタイプではない。だが、とても料理が上手いのだけは認める。  メインのおかずは豚の生姜焼きだ。生姜焼きは好きだが調子に乗ってその気になられても困るので黙っておいた。 「ところで、お前は食べないの?」  俺の言葉に極娘(ゴクムス)は、はっと気付く。 「あ、はい。では私も……いただきます」  極娘(ゴクムス)は自分用の弁当のナプキンをほどくと、弁当箱の大きさは俺に作ってくれたものの半分ほどだった。 「ちっさ! それ、足りるの?」 「あ、はい。私……少食なので」  そう言って極娘(ゴクムス)が自分の弁当を開くと、中身は俺がいただいている弁当の量をそのまま減らした内容だった。  俺の弁当箱には二切れ入っているだし巻き玉子も極娘(ゴクムス)の弁当箱にはひと切れのみだ。  そして極娘(ゴクムス)は再び「いただきます」と言って、ちょんと両手を合わせた。  俺は箸でちびちびと食べ始めるそいつを横目で見ながらだし巻き玉子を口に放り込む。  出汁の味が利いていてご飯が進む。これならばご飯の量はもっと多くてもいいかもしれない。  そこで俺は我に返る。  いやいや、料理に感心してんじゃねーよと。これはあくまで昨晩のお詫びであって、こいつとはこれっきりにするつもりだ。  そして俺はいよいよメインの豚の生姜焼きに箸を伸ばす。めちゃくちゃうまかったらどうしよう。  結論。これまでに食べた生姜焼きのなかで一番おいしかった。これだけでご飯三杯はおかわりできる。  すると、側溝への転落防止のために植えられた生垣の葉が揺れる音がした。  そんな風などどこにも吹いていない。  何かがいる。  俺が目を凝らして緑の隙間を凝視すると、そこには不審な人影が四つ。  間違いない。シャドルー四天王だ。  間抜けなことに、まだこちらに気付かれていないとでも思っているらしい。 「なあ」と、俺は極娘(ゴクムス)に顎を振る。「あいつら、なんでいんの?」  極娘(ゴクムス)はぴたりと箸を止める。そして眼鏡の奥の目を細めて、同じく生垣を見つめる。  四つの人影はそれに気付いたようで、びくりと反応した。それによってさらに大きく葉が音を立てる。 「部賀さん」と、極娘(ゴクムス)が生垣に声を掛ける。さらにびくりと葉が揺れる。「こそこそしてないで出てきてください」  すると、生垣から部賀と三人の舎弟が申し訳なさそうに背中を丸めながら出てきた。 「すいやせん、お嬢! どうしても気になってしまって……!」  そう言って部賀は勢いよく頭を下げる。  ジャガイモ顔、ニンジン顔、タマネギ顔の三人も「すいやせんでした!」と、それに倣う。  しかしこの三人、こうやって並んでいるところを見るとカレーでも作れそうな顔ぶれだ。
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