1人が本棚に入れています
本棚に追加
「それは……多分、お父さんに原因があると思います」
「原因って?」
俺はペットボトルのお茶をひと口飲んで、ある程度の重い話に備える。
「実はお父さん……私が産まれる前に、二度も離婚しているんです。そっちの人だから仕方ないとは思うんですけど……過去二回とも結婚相手が子供をつれて出ていってしまって……それで私のお母さんは三人目の結婚相手で……私が産まれたときには、お父さんは既に高齢だったから……」
そりゃお父さんからしたら可愛くて仕方がないわけだ。
「だからって、やりすぎだっつーの」
「それは私も思います」と、極娘は困ったような笑みを浮かべる。「でも、それだけ大切にしてもらってるっていうことだと思うと……あまり強く言えなくて……」
俺がどのような言葉を掛けようか、頭の中でぱっと思い付いたものはどれもしっくりと来なくて逡巡していると、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
俺は慌てて弁当をかっこむと、蓋をして不器用なりにナプキンに包み、それを極娘に返す。
「ご馳走さま。マジでうまかったよ。これなら毎日でも食べられそうだ」
もちろんお世辞だ。
「こちらこそ……もしお弁当を持参してたらどうしようと、内心ドキドキしてました」
そう言って照れくさそうに顔を伏せる極娘。
「じゃあ俺、もう教室に戻るから、お前も授業に遅れるなよ」
先に言っておくが、社交辞令というものは、ある程度相手との距離を置きながらおこなわなければならい。
この日の俺のお世辞は、プロボクサーのボディブローのように、後からじわじわと効いてくることとなる。
→To Be Continue!
最初のコメントを投稿しよう!