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「大丈夫です。そこは私のこの目で見極めさせてもらいますから」
そんなことを言われると、下手に良い格好をしてしまう八方美人が俺という人間だ。
裏庭のベンチは人一人通れる隙間を空けて二台並び、それと同じような間隔で向かい合うようにして、対面に二台の、計四台のベンチが設置されている。
一台のベンチに三人が座ると、もっと詰めれば四人は座れそうだが、さすがに女子二人とそんなに密着して座る勇気は俺には無い。
俺を真ん中に。俺の左に極娘、右に純恋が腰を下ろしているのだが、決して香水を付けているわけでもないのに、どうして女子はこんなにもいいにおいがするのだろうか。俺はそのなかに懐かしいを探してみるも、何も見付けることができずにいる。
すると、極娘が顔を伏せながら両手の人差し指をちくちくと合わせている。
肩までの髪が横顔を隠しているせいで、表情はうかがえない。
「どうした?」
俺はてっきり、純恋と一緒にお昼を食べることが嫌なのでは……と思ったが、どうやら、そうではなかったみたいだ。
「私……こんなふうに誰かと集まってお弁当を食べるの、はじめてなので、少し……楽しいです」
その言葉に俺は安心した。安心はしたけど、思えば俺、なんでこいつが楽しそうにしている姿に安心しているんだ?
「そいつは結構だけど、早く弁当食べないと昼休み終わっちまうぜ?」
俺の言葉に、極娘は思い出したかのように弁当のひとつを俺に手渡す。
ナプキンをほどいて弁当箱を開くと、一番に目が留まったのがアルミカップの目玉焼きだ。
アルミカップにぴったりと収まった目玉焼きなんて、いったいどうやって作るのだろう。
おそらく、フライパンではまず不可能だ。
「これ凄いな。こんな目玉焼き、どうやって作るの?」
「これは、内側に油を引いたアルミカップに生卵を落として……あとは蒸し器で半熟になるまで蒸すだけ、です」
どうやら目玉焼きならぬ目玉蒸しらしい。
「え、どれどれ? 私にも見せて」と、純恋が弁当を覗く。「あ、ほんとだ。すごーい。今度私も真似してみてもいい?」
「あ、はい。是非……試してみてください」
他のおかずは、昨日同様のピンチョスが二種類。サラダ枠としてモヤシ、ホウレン草、ニンジンの三色ナムル。
メインはミニハンバーグとタコさんカットされた赤ウインナーだが、タコさんの足にあたる部分の開き方が実に美しい。
「タコさんウインナーって、俺も作ってみたことあるんだけど、こんなに綺麗に足が開いたことが無いんだよな。コツとかあるの?」
「はい。タコさんウインナーは、ボイルにしたほうが……足、綺麗に開くんです」
言われてみれば、俺はずっとフライパンで焼いていた。なるほど、ボイルにすべきだったのか。
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