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「私……学校生活には干渉しないでくださいって、あれほど言いましたよね?」
極娘はいったん箸を置いて、シャドルー四天王をじっとりと睨めつける。
「あの……これはアレなんです」と、ジャガイモ顔。「その、小田桐の野郎がお嬢に変な気を起こさねえか心配でして……」
変な気を起こしてるのはまさにお前らだろ、と言ってやりたかったが、これでも相手はヤクザなので黙っておく。
「せめて、お嬢の初登校だけでも見守らせていただればと……」
ニンジン顔が言い訳がましく言うが、さてはこいつら、昨日の入学式もどこかに潜んでいやがったな?
「俺は……なんか、流れで……」
と、気まずそうに手のひらでタマネギみたいな髪をさするタマネギ顔。タマネギはカレーの具でも主張が弱いからこんなものだろう。
そして部賀が腕組み直立をして、俺に言った。
「俺はあくまでお嬢の気持ちを尊重しているまで。貴様のことを認めたわけではない。お嬢に弓引くような真似をすれば、すぐにでも型にハメる準備はできているからな」
こいつらの使う用語は、なんとなくで意味が通じるのだけは素直に感心する。
そしてやはり、いくら肝で強がっても怖いものは怖い。実際に全身がすくんで噛んでいた米すら飲み込めずにいる。
「今、無許可で校内に入っていますよね。用務員の人を呼びますよ?」
極娘の言葉に部賀は「ぬぅ」と唸る。
当たり前だろ。反社が無許可で学校に侵入してたら事案も事案だ。
「私は大丈夫なので帰ってくれませんか?」
その言葉にシャドルー四天王は深々と頭を下げて帰って言った。
余談だが、学校の敷地内から出ていく不審な人物がいたとのことで、その日の帰りのホームルームはクラスじゅうをざわつかせたのは後の話だ。
「しかし、お前も大変だな。あんな奴らに囲まれて」
「はい、そうなんです。実は……中学時代にも似たようなことがあって……あ、恋ではないですよ? 恋ではないんですけど……まあ、こんな感じで目立ってしまって、友達……いなかったんです」
そう言って極娘は箸を持ち直し、気まずそうにちびちびと弁当をつつく。
わからなくはない。部賀をはじめとするシャドルー四天王がしじゅう張り付いていたら、まともなクラスメイトは距離を置くに違いない。
俺のようにコンクリートで固められて海に沈められそうになると、一周回って吹っ切れるが、遠目で見るだけなら奴らの存在感、威圧感はあまりにいかつすぎるし、否応なしに関わりを持たされなければ、絶対に関り合いになろうとは思わない自信がある。
「それにしてもあいつら、なんでお前に対してここまで過保護なの?」
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