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008 黒いかどうかは調べればいい!
キンコーン、カンコーン。
4時間目終了のチャイムが鳴る。
さて、お昼ごはんの時間だ。
私は、家から持って来たお弁当を机に乗せると、向かいの席に友達の聚楽が座って来た。
「ヱル、お弁当一緒に食べよう」
「いいよ」
そんな代わり映えの無い会話が、二人の間に流れた。
私は、お母さんが作ってくれたお弁当を広げてお弁当箱を開ける。
お母さんはいつもの様に、緑黄色野菜たっぷりのお弁当を今日も作ってくれていた。
全く頭が下がる一方だと思いつつ、私は箸でブロッコリーを摘まむ。
「ヱルのお母さんは、えらいよね。ちゃんと色とりどりのお弁当を作ってくれて。家のお母さんが作るお弁当は、いつも茶色くて恥ずかしくなっちゃうのよ」
「……でもさ、茶色いお弁当って美味しいじゃない」
「……まぁ、それは否定しない。やっぱり高校生といったら肉よね。部活するとお腹減るし」
「わかるぅ。お腹空くよね。帰りに食べる、コンビニのから揚げが美味しいのよね。やっぱ部活の後は、肉よ!」
そんな話をしていると、ふらっと、私たちの横に人影が現れる。
「これ。花の女子高生が、なに肉、肉、云っているのよ。傍から聞いていると、ちょっと危険よ」
「ハハハ。美莉おかえり。委員会終わったの?」
「終わったわよ。で、戻ってきたらヱルが肉、肉云っているから、男に飢えているのかと思ってね。……っと、ヱルには閃貴がいるから、飢えていないか」
「やめてよね美莉。私と閃貴はそういう仲じゃないの」
「ふ~ん~」
「へ~ぇ~」
目の前の二人は相槌を打つものの、私の言葉を全く信じていないと言わんばかりのイントネーションで答える。
「……それより、……ほら、聚楽の黒いお弁当の話」
「いゃいゃ、黒くはないわ! それじゃぁ真っ黒こげじゃない」
「……ハハハ、ゴメン、ゴメン」
「あっ、…………そう謂えばさ……」
聚楽が前かがみになり、急にこそこそと小声で話し始める。
私達も、聚楽にならって、前かがみになって、聚楽の内緒話を聞く体制を取った。
聚楽が周囲に目を光らせながら、口を開ける。どうやら、周りに知られてはマズい話らしい。
私と美莉は、聚楽の小声がギリギリ届く距離に顔を置いた。
「実は……、今ヱルが黒いって云ったので思い出したんだけど……」
「なに?」
「男の人のアレって大人になると、黒くなるって本当?」
ボッ。
私と、美莉の顔が一瞬で赤くなった。
「じゅ、聚楽。こんな所で何云っているのよ! お昼の教室よ」
「いゃぁ、ヱルなら見たことあるかなって」
「……ある訳ないでしょ!」
「だって、閃貴の見たりとか……」
「見・て・い・る・訳・な・い・で・しょ・う・!」
私の声のボリュームが上がる。
「ちょっとヱル、ボリューム落として、ボリューム落として」
私は美莉に宥められて、落ち着きを取り戻す。
「はぁぁ、聚楽。アンタ男子に人気あるんだから、そんな事云っちゃダメでしょう」
「だって、気になるじゃない? ちょっとヱル、スマホで調べてよ」
「……調べるって、何て検索するのよ」
「ん~……ペニス、黒色、なぜ? とか、そんな感じ?」
「仕方ないなぁ」
私は、机の上に置いてあるスマホを手に取り、検索エンジンにキーワードを入力する。
えーと、ペニス、黒……。っとそこまで入力したところで、私の背後からぬっと、黒い影が、スマホを覗き込むように近づいて来た。
「なぁ、ヱル。何を調べているんだ?」
私は、声の主へ慌てて顔を向ける。
すると、そこには、家族と同じくらいの年月をともにしている、幼馴染の閃貴が立っていた。
「なっ、なっ、なに見ているのよぉぉぉおおおお!!」
私は、検索しているモノを閃貴に見られたと思い、狙いを定めずに、閃貴にグーで殴りつけた。
しかし、次の瞬間想像もしない雄叫びが閃貴の口から漏れる。
「……ΣガっБばぐ※ΓД…………」
どうやら、椅子に座っていた私の拳は、閃貴の大事な部分と高さが一致したらしい。
故に、直撃を喰らった閃貴はその場に倒れ込んだのだ。
閃貴もまさか、私がそんな所に攻撃をするとは夢にも思わなかった事だろう。
「ごっ、ごめん閃貴。大丈夫?」
「あ~ぁ、ヱルのせいで閃貴の目が真っ白になっているよ」
「だっ、だって、閃貴が急に……」
「まっ、色は分からなかったけど、感触は掴めた感じね。でっ、どうだった?」
「そっ、そんなのわかる訳ないでしょう!」
あぁ……穴があったら入りたい。
因みに、後日私はこんな噂を耳にした。
どうやら、男子の間では、『ボールクラッシャー・ヱル』とのあだ名が出回っているらしい。
そんな恥ずかしいあだ名は、いやぁぁぁあああああ。
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