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あれからずっと、僕はメガネ君と呼ばれて今日に至る。
空を仰げない、俯きがちの日々。
彼女もいなくて、ガリ勉してもちっとも成績が良いわけでもなくて。冴えない大学生になって、冴えない社会人になってしまった。
ちょっとずり落ち気味の湿気で曇ったメガネをあげる時、あの雨上がりの帰り道を思い出す。
雨上がりの日は、上を仰ぎ見なくても空がちゃんと降りてくる。
今はアスファルトになってしまったけれど、やっぱりところどころ水たまりが出来ていて、しゃがみ込むことは出来ないけれどちょっと覗き込んでみたりする。
あの頃のわくわくした日々が、水たまりに写っている、そんな気がして。元気をちょっともらってる。
「雨上がりかぁ…。」
ふとつぶやいていた。
「水たまりって、楽しいよね!」
えっ?顔を上げると、知らない女の子と目があった。
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