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「ここは、こんな、こんなところが......」
ドアをくぐると別世界だった。
頭上には黄色い光の玉が薄く輝き、緑色に覆われている。
「ここがナカツクニです。悠乃さんの世界でいう太陽が、あの黄色で、
空はずっと緑色です。
そしてこれが、私の経営する店であり、研究所で住まい。
『セラピストア』というドラッグストアです」
「これがドラッグストア.....」
まるで積み木を組み立てたようなデザインの建物は、赤と黒の
光沢が美しかった。
「ヨコクチ、おいで。おまえの呼び寄せた客人をもてなそう」
モース博士が言うと、ヨコクチさんが僕の腕の中から飛び下りた。
「とりあえず、テラスで、お茶しましょう。紅茶に好みはありますか?
甘いものはお好きですか?焼きたてのスコーンもありますよ」
店の前には芝生の庭になっていて、丸いテーブルと椅子が数個あった。
「あ、すみません。僕は、食欲がほとんどなくて......」
「そうですか、それなら栄養茶にしましょう。
ヨコクチ、持っておいで」
うなづいたヨコクチさんが店の中へと入った。
しばらくすると、ヨコクチさんが後ろ足で立って、紅茶のカップを
前足で持って出てきた。
それをモース博士が取ってテーブルに置いた。
「そんなに身体が細くては心配になります。せめて飲んでください」
「い、いただきます」
僕はテーブルに座ってカップを取り、ひと口、飲んでみた。
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