ヨコクチさん

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「悠乃くん、客もいないし、ティータイムにしないかね? ヨコクチがスコーンを焼いたんだ。食べてみてほしい」 モース博士がテラスの椅子に座った。 テーブルには紅茶とスコーンが更に盛られていた。 「ヨコクチさんって、料理もできるんですか?」 「彼は器用なんだよ」 テーブルの上でヨコクチさんが後ろ足で立って、前足を組んで 『どうだい』という顔をしている。 「食べて、みようかな......」 そうしてスコーンを手に持って食べてみた。 「おいしい、おいしいよ、ヨコクチさん!」 ヨコクチさんが笑顔になった。 ひとつしか食べられなかったけれど、罪悪感は無かった。 「あのね、おいしいものを食べたら申し訳ないって思ってた。 けれどね、ヨコクチさんの作ったものを食べてあげられた。 これって、良いことだと思えるよ」 ヨコクチさんは泣きながら笑っていた。
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