ヨコクチさん

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「ヨコクチにはね、相棒がいたんだ」 モース博士がローズティーを飲みながら言ってきた。 「でもね、死んじゃったんだ。 それからだよ。ヨコクチが喋れなくなったのは」 ヨコクチさんがうつむいた。 「ヨコクチ、その話し、悠乃くんにしてもいいかな?」 ヨコクチさんはうなづいた。 「あそこ、山の上のほうに鉄骨が見えるだろう? 本来は家があったんだよ」 「あんなところに?」 僕はまだセラピストア以外に出かけていないけれど、ナカツクニは 西洋の街並みだ。 小高い山々に囲まれて気候が安定している。 季節というものがなくて、僕らの世界でいうところの秋の頃合いのままだ。 「そこにね、石職人の若い男が住んでいたんだ」 モース博士の長い話しが始まった。
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