ヨコクチさん

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そんな、ささやかな苦悩の会話をしていたとき、訪問者が訪れた。 「すみません、この一帯の土地管理をしている者です。 ティムさんの家は古く、構造的に鉄骨が脆くなっています。 安全を考慮して引っ越したほうがいいかと」 ティムは考え込む仕草をした。 「この家は工房として気に入ってまして。身体に馴染んでいるんです。 他を探すといっても、金が足りません。ここにいます」 「しかし、かなりぐらついていますよ?」 それはヨコクチも来る度に感じていたことだった。 「大丈夫です。どうしてもダメなら補強工事してもらいます」 管理者は渋い顔をして去っていった。
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