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乱暴に投げられたがヨコクチさんは無事だった。
しかし目の前には家の崩壊が進む光景があった。
そしてティムが立ち尽くしている。
「ティム!なにしてるんだ!逃げろ!死んじまうぞ」
「ヨコクチ、俺はこの家で生きてきた。この家で死ぬ」
「ティム!!」
「精一杯、仕事をした、精一杯、人を愛した。
それでいい、それでもう、充分なんだ」
「ティム!ティム!ティム!ティム!ティム!ティム!ティム!ティム!」
「さようならヨコクチ。俺の大切な親友。出会えて良かった」
ヨコクチさんが叫び続ける中で、ディムが微笑む中で。
家は完全に崩壊して、支柱の一部の鉄骨だけが残った。
崩れ落ちる破片の隙間から赤い髪が見え隠れして、消えた。
救助隊が駆け付けたときも、ヨコクチさんはティムを呼んでいた。
ティムの遺体が発見されたときも呼んでいた。
名前を呼び続けた、叫び続けた。
そうしてヨコクチさんの喉は壊れ、喋れなくなった。
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