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他の人たちはともかく。僕が考えるのも、おかしな気もする。
自分は彩を間接的に死なせた身として、生きる価値がないと思った。
それなのに、自身の生き方を全うした人物の自殺が悲しい。
それにこたえるかのようにモース博士が言った。
「ティムはティムで、幸せな最期だったとは思うよ。
だけど、残された者の悲しみは大きかった。
ミルティさんは無事に結婚したけれど、いまも現場に花を添えている。
ヨコクチは精神が不安定になり、別世界へ転移するクセがついた。
ナカツクニで暮らすのが辛いからだよ」
「それで、僕のところに来てしまったんですね。
僕も死を望んでいたから」
「悠乃くん、自殺はね、どんなカタチであっても良いことじゃない。
君も生きるべきなんだよ」
僕は、すぐには返事はできなかった。
そして沈黙......。
そこでヨコクチさんが前足で皿の上のスコーンを取って、僕へと
差し出してきた。
「え?食べろって?」
「食べて生きろって、言ってるんだよ」
モース博士の言葉からも伝わってきて、僕はスコーンをかじった。
「おいしいよ、ヨコクチさん。生きて、こんなにおいしいものが食べれて、
とても嬉しいよ。ありがとう、ヨコクチさん」
ヨコクチさんが寂し気な顔で、それでもうなづいた。
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