トウマくん

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茶色い毛並みのトウマくんは、花屋で花の配達をしている。 早く走っても花を揺らさないという特技を持っているので、街中の 人気者なのだそうだ。 ちなみにサイズとしては、ヨコクチさんより少し大きめ。 とりあえず話しを聞こうと、僕とモース博士とテラスに集まった。 トウマくんはテーブルに座り、前足でホットココアのカップを持って フ―ッと、息を吹きかけて飲んで、おいしさに微笑んで、フ―ッと 息を吹きかけて飲んで、おいしさに微笑む。 猫舌なので、カップも熱くならない専用を作ってもらっている。 みていてなごむ光景だが、僕たちは可愛いとは言わない。 トウマくんはカッコイイ競走馬になりたい夢があるからだ。 「それで?どうして、のんびりしてる場合じゃないの?」 店先にあるハーブの植木鉢に水をかけながら僕は聞いてみた。 「あぁ、そう、そうなんです! モース博士、トゲのないピンクの薔薇を作ってください、 二週間以内にお願いします!」 「トウマくん、それ無理」 モース博士はアッサリと言い切った。 「だって、だって、アリーア姫の結婚式なんですよ! ピンクのトゲの無い薔薇のブーケを持って欲しいんです!」 「あぁ、アリーア姫か、納得」 「モース博士、アリーア姫って?」 「この国の国王の一人娘だよ。そういえば゛隣国の王子と恋仲で、 ついに結婚できると新聞に載っていたなあ」 「それとトゲのない薔薇と、どういう関係が?」 「花屋のトウマとして、馬のトウマとして、個人的な願望です!」 トウマくんが前足で自身の胸をトンと叩いた。
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