トウマくん

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トウマくんは城の庭園では咲かせられない花を、配達していたそうだ。 アリーア姫は特にピンクの花が好きで、自室に飾る為に注文していた。 「トウマさん、いつも綺麗なピンク色を選んでくれてありがとう。 おかけで毎日、それこそ華やかに暮らせるのよ」 金色に輝く髪と茶色い瞳のアリーア姫の美しさ、そして王族なのに 庶民と気さくに接する大らかさ。 トウマくんは恋というより尊敬の念を持っていた。 「ねえ、トウマさん。私ってワガママなの。 そんな自分が嫌になってしまうわ」 「え?とても素直な姫様がワガママ?そんなわけありません」 いろとりどりの草花で覆われた城の庭園の中で、アリーア姫が 虚ろな瞳になった。 「私ね、薔薇にアレルギーがあるの。正確には薔薇のトゲに触れると、 熱を出してしまうのよ。だから薔薇だけは近づけられないの。 だけどね、薔薇の造形が大好きなの。香りも。 私、結婚するときはピンクのバラのブーケを持ちたい。 だけど体質的に無理なのよね。それを望むのは、ワガママだわ」 「そんな、そんなことないです! その乙女のささやかな願い!ボクが叶えてみせます!」 「トウマさん、本当に?」 「はい!花屋として最高の仕事をしてみせます!」
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