悠乃優也

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「ほら、差し入れ。冷蔵庫に入れておくからな」 働く気力がなくなり退職届けを出した。 その会社の同僚で、近所に住んでいる友人の赤月疾風(あかつき はやて)が 定期的に、自宅にやってくる。 とてつもなくカッコイイというか壮大な名前の彼は、身長が192センチで ワイルドなイケメンだ。 「おっ、以前よりは食べてるじゃん、えらい、えらい」 「食べてから罪悪感で吐いた」 「そうか、この赤いタッパーのほう、先に食べろよ」 赤月が冷蔵庫を整理しながら言った。 家の鍵をかけないままなので、赤月は勝手に入ってくる。 そして部屋の掃除と洗濯までやっていく。 無口だけど世話好きなタイプの彼は、いつも優しい。 それに相応しい明るくて陽気な妻がいる。 差し入れの料理も奥さんの手料理だ。 僕はリビングのソファーに横たわったまま、なにもせず、なにも言わない。 そして差し入れを少ししか食べない。 小奇麗にしていた黒髪の短髪もボサボサに伸び放題で、無精ヒゲ。 シャワーもたまにしか浴びない。 自分を整えるとは、こんなにもめんどうだったと実感している。 爪が伸びて切ることさえも重苦しい。 生きる為にすることなんてしたくない。 死にたい。 死んでしまいたい。 しかしそれは彩を死なせた罪から逃げるような気もした。 僕は罪を償わなければならない。 しかしどうやって? わからないまま時は過ぎていく。
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