悠乃優也

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「あの、これは、どういう?」 とりあえず首輪に向かって話しかけてみる。 『不意に別世界とつながったんですよ。 えっと、あっ、ここだ。位置が特定できました。 そちらに向かいます』 「はあ?」 「はい、どうもーっ」 「わあぁっ!」 湯舟の中に波紋が広がり、その中から人が顔を出してきた。 そして浴槽に手と足をかけて出てきた。 衣服を濡らさないままで。 「よいしょっと、お騒がせして申し訳ありません。 ヨコクチを保護してくれて、ありがとうございます」 白髪で丸眼鏡をかけて鼻が高くて、小柄だけど細身で、イケオジという 印象だった。 そして白シャツに黒ズボンで白衣を身にまとっている。 「ヨコクチ?」 「その犬の名前です。小さいけど中年男性の年齢なんですよ」 僕は再び犬をみつめた。 しょんぼりとした顔のままだった。 「あの、初めまして、ヨコクチさん」 年上らしいとわかり、さん付けになった。 「喋れなくなった犬なんですよ。そして精神が不安定だから、 フラリと別世界を彷徨ってしまう。その首輪で探すわけです」 「はあ......」 いや、犬は喋らないものなのでは? なんだ?僕の身に何が起きているんだ?
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