4人が本棚に入れています
本棚に追加
いい日か悪い日か
早起きをして今日はバスで行くことにした。
バス停に行くとまたあの大きな傘が目の前に。
まさかと思ったらまたあの彼だ。
「あれ?」
「あ、どうも…。」
「あ、そうか、今日は2月3日だったね。」
彼がこの日を覚えててくれた。
「俺は雨男だから。きっと今日もいい日になるよ…」
「え?」
「雨の日だって、いい事もあるってこと。」
「ははは。でも今日もやっぱり雨からのこの雪だし。最悪。
今日、頑張れるかな…。」
「午後から雪は雨に変わるし、夕方にはやむから。雨はそのうち上がるんだよ?
君にこうして会えたし頑張ってって言えたから。俺は今日いい日になった。」
「え…?」
そんな風に言われたら、なんか勘違いしちゃいそうだ。
どこの誰かもわからない彼のこと…。
「あのさ…。ずっと聞きたかったんだけど。前、同じバスに乗った日、君を見かけた気がするけど、気のせいかな。」
「え?」
「あの日、大学のアリーナでビーチバレーしたんだけど、君を見かけたような気がしたんだ。なんてね。やっぱりそんなの気のせいか…。」
少し照れたような笑顔で彼がそう言った。
え?うそ…。じゃあ、やっぱりあれは…。そう言おうとしたら。
また急に降りだした。湿った雪は大きなみぞれになってる。
「あ、バス来た!」
あわてて二人でバスに乗り込む。バスに乗り込みながら振り返った彼が私に言った。
「きっと頑張れるよ。
いいこともある。
だって俺は雨男だから。雨の日はいつもいいことがあるからね。」
また彼は前の方の席に1人で座った。私はいつものように一番後ろの端の席に座り、参考書とにらめっこ。駅に着くまで単語を何度も見直した。
また駅に着くと彼の姿はなかった。
最初のコメントを投稿しよう!