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雨男と雨女と
バス停に着くと先客がいた。大きな傘をさしてるからきっと男の人だ。背は高めかな。随分上の方に傘がある。
すらりとしたその後ろ姿のすぐ横に静かに並んだ。
すると向こうから原付バイクが凄いスピードでこっちに向かってきた。
あー、最悪。嫌な予感。目の前には車の轍で削れたアスファルトに大きな水溜まりがある。
お願い!そこを避けて走って下さい!
バシャ!
願いは虚しく。予想通りバイクはその轍に沿って走り抜け見事に跳ね返った水溜まりの水飛沫がこっちに向かって飛んできた。
「うわっっ!!」
二人同時に声を上げてた。
最悪だ。やっぱり雨の日はろくなことがない。制服めがけて私はもろにその水を被った。
「大丈夫?」
傘の下から声をかけられて見上げた瞬間、息が止まった。
あ…あの人だ。
心配して声をかけてくれた彼の着ていたおしゃれなTシャツもジーパンも濡れて色が変わってる。
「だ、大丈夫、です。」
「え?大丈夫じゃないでしょ。」
そう言って背中に背負ってたリュックを開け中から取り出した赤いスポーツタオルを貸してくれた。
自分も濡れてるのに…。
「え?本当に大丈夫です。」
「いいから使って?」
「え、でも、そちらも濡れてますし…。」
「俺は大丈夫だよ。着替えのジャージ、中に入ってるし。制服濡れてるじゃん。とりあえず拭きなよ。」
「あ…、ありがとう…ございます。」
「あー。もう最悪。だから雨は嫌なんだよ…。」
って。思わず呟いてた。
「ごめん、俺、雨男だから。俺のせいかも。」
「え?あたしこそ、雨女なんです。
大事な日はいつも雨。だから雨の日って嫌なことばっかり。」
「そうなんだ、だけど俺はこの雨男のお陰で結構いいことあるんだ。」
「へ?」
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