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中学三年生になった。
毎日太陽を見るのが辛かった。
この太陽は、男の子たちの命。そう考えると、小学生の子が図工の時間に描いた太陽ですら憎かった。
6月29日。
誕生日もやっぱり雨だった。
再びカミサマたちが身を捧げ、梅雨が明けるまでは降り止まないのだから当然だが、どこか期待していた自分がいた。太陽は嫌いになったはずなのに。
今年もきっと孤児たちが連れてこられていると知っているのに何も行動を起こさない私に、奇跡は起こらないのだろう。
何度も二人で差した傘を持ってあの木の下に行き、開いた傘の陰でうずくまった。
今でも心の中には、ともきがいる。
雨粒が傘に当たる音を聞いているうちに、ウトウトしていた。
目を開けると、いつの間にか雨の音がしなくなっていた。
「雨が、あがってる……」
いつかのように傘を幹に立てかけ、濡れた木の皮に足を滑らせながら登った。
「わあ……」
梅雨に入ってからは雨粒で遮られていた視界が、一気に開けていた。
降り続いた雨が空気を浄化したのか、どこまでも遠く見渡せた。澄んだ空気が気持ちいい。
頬の上に冷たいものが落ちてきて見上げると、木の葉から水滴が滴っていた。
葉は太陽の光に透けて黄緑色をしていて、水滴がキラリと光っている。
葉と葉の間から降りそそぐ太陽の光を浴びた。この光はきっと、ともきからの誕生日プレゼント。
暖かい陽の光に包まれて、目を閉じる。
ともきがどこかから見守ってくれている気がした。
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