梅雨明けは涙とともに

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 最初に出てきたのは、島の中央に建っているカミサマの館に住んでいるおじさんだった。やっぱりカミサマが来たのね。  次々と人が降りてきた。遠目で分かりづらいが歳上の男の子に見えた。  ぞろぞろと並んで出てくるカミサマたち。何人いるのだろうか。  数え始めたが、100人を超えたあたりで誰を数えたのか分からなくなって諦めた。  カミサマはどこが人間とは違うのだろうか。  よく観察してみようとさらに顔を出した時だった。  最後尾にいたカミサマと、目が合った。  耳にかかりそうな長さのサラサラとした黒髪で、身長は私より高そうだった。  慌てて顔を岩の後ろに引っ込めた。激しい心臓の音が聞こえる。悪いことをしているのを見られた気分だ。いや、カミサマには本来近づいてはならないから、目が合った時点で悪いことなのかもしれない。  一気に上がった息を整える。  一瞬だったし、偶然こちらに顔を向けたのを勘違いしただけかも。そう考え、また目だけを出してのぞいた。  カミサマはまだこちらを見ていた。ヒラヒラと親しげにその手が振られる。  心臓がドキンと跳ねた。手を振り返す勇気はなく、急いでその場を離れた。  家に帰り、ベッドに飛び込んで足をバタバタと動かす。その日はなかなか眠れなかった。
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