梅雨明けは涙とともに

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 私は生まれ育ったこの島から出たことがない。  広大な太平洋に浮かぶ離島に外から船が来ることは滅多にない。本土に渡るには島の漁師のおじさんに船を出してもらう必要がある。  住民は全員が顔見知りだ。小学校と中学校は一つになっていて全校生徒は11人しかいない。  私は今月から進級して中学二年生になったが、去年には既にこの学校の最年長だった。他の10人は小学生なので、毎日小学生たちの面倒を見ている。  学校が終わり島内を一人で歩き回って暇を潰していると、少し荒れた海を進んでくる大きな船を見つけた。島の住人全員が余裕で乗れそうだ。 「カミサマたちが来たんだ!」  カミサマは4月になると島に来て、梅雨が終わる7月頃になるとどこかに去っていく特別な存在だと教えられている。  歳の近い友人のいないこの島では、刺激的な出来事はほとんどない。  カミサマたちに近づいてはいけないと教えられているが、少し見てみたいという好奇心がむくむくと湧き上がった。  岩陰に隠れて、船が岸に近づく様子を固唾を呑んで見守った。船はゆっくりと止まり、ゆらゆらと揺れた。  もうすぐ家に帰る時間なのに、なかなか人が出てこない。時計をちらちらと確認しながら、誰かが降りてくるのを待った。
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