黒薔薇姫

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「見てよ、黒薔薇姫よ」 「ホントに不吉だわ」 あれから数週間経った朝、ロザリアが 廊下を歩いているとメイド達がこちらを見て ヒソヒソと話をしていた。 ロザリアは嫌な胸騒ぎを感じた。 なんの理屈もないただの勘だが、 部屋に戻るまで落ち着かなかった。 ロザリアはこの王国の伝承の物語 『黒い魔女』を図書館から借りていた。 もともと物語が好きなロザリアは この狭い世界での唯一の娯楽が読書だった。 読み進めていくうちに胸がドクンドクンと 鼓動を早めていく。 『それ以来、黒は不吉の象徴になったのです』 ロザリアは姿見で鏡を見る。 長い黒髪に黒曜石のような瞳。 あの日、メイドが怒った理由。 メイド達が私を見ながら眉を顰めていた理由。 「そういうことだったのね」 ロザリアはギュッと本を抱きしめて 涙を流した。嗚咽が虚しく部屋に響き渡る。 その日、ロザリアは自分の姿が不吉の象徴 だと知ることになったのだった。 リアは部屋に戻るなり嗚咽を漏らす 『黒い魔女』を手にしている我が子を目にすると 知ってしまったのかと察してロザリアを抱きしめた。 そして、リアはロザリアに 全てを話す覚悟をしたのだった。
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