想い

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想い

「なんだと?! ロザリアの存在が公に!?」 フレデリックは玉座から立ち上がった。 宰相が言うには何者かが王宮に入り込んだらしい。 その者は捕らえたが街ではもう、新聞が貼り出されているという。 フレデリックは唇を噛み締めた。 今まで、娘を慮ってロザリアを 世間から隠していたが致し方ない。 これは、とても辛い決断だった。 ……許してくれ、ロザリア。   不甲斐ない父を許してくれ。 涙を堪え、命令を下す。 宰相は驚いたが王の決定を覆すことはできない。 承知致しましたと頭を下げた。 ロザリアは乳母と共に離宮から追放された。 隣国の誰も知らない土地で 一生を過ごさなければならない。 父を恨んだが母から聞いた言伝に驚いた。 「宰相様が、王様はロザリアのことをとても案じていたって。ロザリアはお父様に愛されていたのね。 きっと今回の追放もあなたを守るためだわ」 涙が出そうだった。 ありがとう、お父様。 お父様だけでも愛してくれて。 ロザリアは父の想いとともに隣国へ旅立った。 その後、王国では姫は死んだと発表され 何日か経つと騒ぎは収まった。 フレデリックは、娘は私と 同じ空を見つめているのだろうかと真っ青な 空を見上げたのだった。
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