過去は唐突に

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過去は唐突に

恋心を自覚してから、 ロザリアは日を追うごとに レアンを好きになっていった。 レアンの全てが愛おしい。 でも、こんな私が好きになっていいの? 不吉の象徴である私が。 過去の黒い思い出は時折ロザリアの心に 顔をのぞかせる。 「ごきげんよう、ロザリア」 聞き覚えのある声にヒュッと息を呑む。 過去は唐突にやってくる。 それは、ロザリアの生みの親アイリスであった。 いつもは豪華なドレスなのにシンプルな ワンピースを着ている。 「お前達!」 後ろに控えていた町人に扮装した影たちに 合図をすると、ロザリアは猿轡を噛まされ 縄で縛り付けられた。視界を奪うためか 黒い布も被せられる。 一瞬のことで声も出せなかった。 声を出したところでここは森の中。 誰にも届かないだろう。 嫌っ!! レアン!お母さん! 助けてっ!! アイリスが薬を染み込ませた布で ロザリアの鼻と口を覆う。 ロザリアは意識を失い、地面に崩れ落ちた。
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