忌み子

1/1

10人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

忌み子

「ごめんなさい、フレデリック様 こんな気味の悪い子を産んでしまって」 王妃はさめざめと涙を流し生まれたばかりの我が子を の頰を涙で濡らした。 この王国では、黒い髪と黒い瞳を持つ者は 気味が悪い、不吉の象徴だと言われていた。 なぜなら、昔 黒い髪と黒い瞳を持つ魔女が 王国の民を呪い殺したからだという。 その話は何の信憑性もない伝承、御伽話。 だが、時代を越え長年染みついた思想は 変えることはできない。 国王や王妃でさえそうなのだから。 赤子は黒髪だった。 きっと、まだ開かない目も黒いに違いない。 国王フレデリックは、いかつい顔をさらに歪ませた。 「これは我の子ではない」 フレデリックは赤子を離宮で育てるように 使用人に言いつけ、 存在を秘匿するようにと命じた。 国民に混乱が起きるからだ。 王妃であるアイリスは我が子を憎んだ。 待ち望んだ子なのに、魔女と同じ黒い色を持ち しかも、王位を継げない女児だったのだ。 アイリスは子を愛することができず、 離宮に赴くことはなかった。 姫は乳母リアによってロザリアと名付けられ 実の親子のように愛されて育った。 だが、ロザリアは真実を知ることになる。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加