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どれだけ時間が経ったのか?車の時計を見るまでは分からなかった。
「私…ここに30分以上も居るんだ…。」
背後から車の音が聞こえた。振り返るとタクシーが走ってきた。そのタクシーは香織の乗る車を過ぎると止まった。
降りてきたのは工藤だった。
「えっ!?どうして?」
そう言う香織の車の助手席に乗り込んできた。
「どうしたんですか?その血?」
「…え、あぁ…叩かれたの…。」
「誰に!?」
「…夫よ…。」
「とりあえず…こっちに座って!!」
工藤が香織を助手席に移し、自分が運転し始めた。
「…どこ…行くの?」
「ドラッグストアです。」
そう言うと安心したのか。香織が話始めた。
「…家に帰ったらね…夫が居て…"男でも出来たのか"って言われて…シャワー浴びようと思ったら…脱衣所に入ってきたの。それでね…触られそうになったから、"汚ない手で触らないで"って跳ね除けたら…この有り様…笑えるよね?」
「とりあえず、黙っててもらえますか?」
工藤の言葉で窓から海を眺め黙っていた。
「さっき…沙有里さんの気持ちが…何となく…分かった気が…。」
「それ以上言うな!!」
工藤が怒鳴った。
「もう、何も失いたく無いんだよ!!俺は!!」
「えっ…。」
「…頼むから、アイツの事は言わないでくれ。」
「…ゴメン。」
そう言ってまた、海を眺めていた。
「…1つだけ、聞かせて。」
「…なんですか?」
「赤い灯台ってだけで…どうして場所が分かったの?」
香織には分からなかった。
「灯台の色は、港の奥に向かって右側が赤、左側が白と決まっています。つまり、逆を考えたら良いんです。この辺にある港…つまり灯台は1箇所だけです。」
「…逆って…つまり…。」
「港から見たら右側が白、左側が赤って事です。」
「…そうなんだ…知らなかった。」
「釣り人なら、知ってる事ですけどね。」
「…工藤君…エスパーかと思った…。」
「とりあえず…黙ってください。」
「うん。分かった…。」
そんな工藤が堪らなく好きな香織だった。
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