Woman

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散々、文句を言って喉がカラカラになっていた。 目についたコンビニに車を止めて、中に入ると…工藤が居た。 いつものスーツ姿ではなく、スウェットの上下姿。 着ている物は違えど、工藤と直ぐに分かった。 雑誌コーナーで表紙を見つめている工藤が入口に居る香織に気づいた。 「名越さん?」 「…あぁ、工藤君。」 「また…カートリッジの買い忘れですか?」 「いや、飲み物を買いに…。」 「飲み物…珍しいですね?」 「まぁね…工藤君、家近いんだっけ?」 「この前もそれ聞きましたよね?(笑)歩いて5、6分なんでって。」 「…そうだったね。忘れてた。ゴメン。」 「なんか…いつもの様子と違いますね?」 「えっ…そう?」 「ええ。なんか…あったんですか?」 「…ううん。何にも無いよ。」 「…そう…ですか?」 香織は飲み物のコーナーに行き、ビールを数本とおつまみになりそうな物を手にレジへ向かった。 「…円になります。」 店員の声にクレジットカードで支払いを済ませて店を出た。 車に乗るなり、買ったばかりのビールを一気に飲み干した。 もう一本も半分まで飲んで、エンジンを掛けた時だった。 運転席の窓をコンコンと叩く音。工藤だ。 窓を開けて工藤の顔を見た。 「どうしたの?工藤君?」 「名越さん…飲酒運転。」 「…え?」 「だから、飲酒運転になりますよ。この辺、パトカーがウロウロしてますよ。」 そんな事を言っていると、目の前に巡回中のパトカーが止まっていた。 「ほら、言った途端に来た。」 パトカーの運転席の警官が見ていた。 「…ちょっと、助手席に移って下さい。」 「え…あ、うん。」 運転席に工藤が乗り込んだ。 パトカーがパトライトを回して駐車場に入って来た。 パトカーの助手席の警官が降りて来て、工藤に話しかけてきた。 「こんばんは。巡回中なんですよ。お酒…飲んで無いですよね?」 工藤は冷静だった。 「アルコールチェック…しますか?こっちの人(助手席の人)は飲んでますけど。」 「念の為、息を吹き掛けて貰えますか?」 工藤は息を吐いた。 隣の香織は片手にビールを持っている。それを懐中電灯で確認した。 「免許証の確認をお願いしても良いですか?」 執拗な質問攻めにも工藤は冷静に対応していた。 「1.2.3…やってもゼロゼロですけど、時間の無駄ですよ。それでも良いなら、どうぞ。なんなら、尿検査もしますか?」 そう言って免許証を渡す工藤。 《えっ!?この人、何言ってんの?》 「…結構、こう言った職務質問されてるんですね?」 「えぇ、何回かは。その度、すぐ免許証をかえしてくれますけど。」 アルコールの匂いもしない。冷静に対応している工藤を見て運転席の警官を見た助手席の警官が頷いた。 「ご協力ありがとうございました。お気をつけて。」 そう言って工藤に免許証を返し、2人の警官はパトカーに乗り込んで、去って行った。
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