Woman

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「あのままだったら、検挙されてましたよ。」 工藤の言葉にハッとした。 「…ありがとう…。助かった。」 「何があったかは知りませんが、良くない事です。知ってますか?飲酒運転の罰則や反則金。」 香織は黙っていた。今になってようやく事の重大さに血の気が引いた思いだった。 「どうするんですか?運転出来ないでしょ?このままずっと、ここに居るわけにもいかないし…。」 「…そうよね。代行でも呼ぼう…かな?」 そう言った時、工藤が何かに気づいた。 「…これでよく、走って来ましたね?」 「えっ…。」 工藤がメーターを指差した。 「燃料…ほとんど、空じゃないですか?」 メーターの燃料残量を見ると、点滅していた。 「…はぁ…こういうところなのよね…。何かやると、何かを忘れる…。」 工藤が運転をし始めた。 「えっ?何処行くの?」 「何処って、燃料入れに行くに決まってるでしょ?」 「あぁ、ゴメン。」 工藤は運転席の窓を開けた。 「酒臭いですよ(笑)」 「…ゴメン。」 「さっきから、ゴメンしか、言ってませんね(笑)」 「…そうだね…ゴメン。」 「ほら、また(笑)」 何も聞かずに、いつ止まるか分からない車を近くのガソリンスタンドまで走らせた。 「満タンで良いんですか?」 「えっ…あぁ、私のカード…」 香織が財布からクレジットカードを取り出そうとすると、工藤は燃料を入れ始めた。 「結構、入るんですね?この車。」 給油機のメーターを見ながら、給油ノズルを握っていた工藤が言った。 「ヨシッ!!入った。」 レシートを手にして車に乗り込んで走り出した。 「あ、お金…。」 「あぁ、クレカなんで来月にでも請求来るんで、その時で良いです。」 「いや、さすがに良くないよ!!クレカでもちゃんと支払うから。」 「じゃあ、請求きたら、名越さんに請求しますので。」 そう言われ持っていたクレジットカードを財布に仕舞い込んだ。 持っていたビールの半分を飲み干した。 それを見た工藤は笑っていた。 「…間違いなく、捕まってましたね。」 「…もう、捕まったって良いよ。」 「いや、良くないでしょ?」 「もう、疲れた。」 そう言う香織に何も聞かない工藤。 「で、どうするんですか?」 「どうする?あぁ、どうしよ…。何処かコインパーキングみたいな所ある?そこで寝て、朝になったら帰る。」 「明日も仕事ですよ?」 「その前に帰って支度する。」 「じゃあ、何処かのコインパーキング…入れますか?」 しばらく走っているとコインパーキングを見つけた。 「ここに入れますよ?」 「…うん。ありがとう。」 そう言って工藤がコインパーキングに車を止めた。
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