Woman

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ワンルームの部屋は整理されていた。 大画面のテレビに必要最低限のモノしか置かれてない部屋。 「…綺麗だね。」 「…何がです?」 「部屋…綺麗。」 香織の自宅の様子と全く違う。物が散らかってない状況。 「悪い意味じゃないんだけど…」 「何も無い…って言いたいんでしょ?(笑)」 「よく分かったね(笑)」 「前はカーペットとか、その上にテーブルとか置いてあったんです。」 「処分したの?」 「はい。パソコンもデスクトップから、ノートパソコンに変えました。」 フローリングの床は今時のソフトフローリングではなく、本物の木のフローリング。 工藤が折り畳みテーブルと、ちょっとしたテーブルを用意すると、香織が腰掛けた。 「誰かが来る前提で…揃えてないので、こんなのしか無くてすみません。」 「いや、全然良いよ。ありがとう。」 「…何か食べたんですか?」工藤の問いに 「まだ…だけど。」と答えた。 「嫌いな物…有りますか?」 「…いや、特に無い。」 「かぼちゃの煮物と味噌汁…あと梅干しとご飯しか、有りませんけど、食べますか?」 「えっ…良いの?」 「口に合うかどうか?分かりませんけど。」 「…食べる。」 工藤の料理は美味しかった。いつもはバタバタと作る夕飯よりも。 「食べた。ご馳走様でした。ありがとう。」 食べ終わった香織の食器を洗い物を洗い場に持っていく工藤。 「あっ、私がやるから。」 「とりあえず、座ってお茶でも飲んでて下さい。」 そう言うと冷蔵庫から麦茶を出してきた。 「…もしかして…そのお茶も…作るの?」 「はい。作りますよ。」 そう言って洗い物を始めた工藤。 キッチンで洗っている工藤の後ろ姿。それをお茶を飲み待つ自分に違和感しか無かった。 大画面のテレビ代の下の本。それに目をやった。 哲学書やエッセイ…絵本に数冊のファッション誌。 昔の俳優の写真集などが並べられていた。 それらを眺めていると、工藤が気づいた。 「まとまりの無い本の集め方でしょ?」 「うん(笑)ファッション誌なんて、これ10年前のだよね?」 「着る服なんて、あまり変わってないですからね。それに、流行に流されるのはちょっと…。」 そう言いながら洗った後の片付けをしていた。 「私…何もしてないね…。ゴメンね。」 「…いつもそうやって、謝るんですか?」 「そういう訳じゃないけど…。」 「だったら、謝らなくても良いのでは?」 そう言って自分のソファーに腰掛けた。 工藤の座るソファーは2人には小さいが1人では幅が広い。 「…ねえ…。」 「はい?」 「そのソファー…2人座れるの?」 「お互いのお尻が半分、出るかもしれませんね(笑)」 「そっちに…座っても良い?」 今、座ってる座面に目をやって、横にずれた。 香織は折り畳みテーブルと椅子を元に戻し、工藤の隣に座った。 自然と工藤の肩に頭を乗せる事が出来た。 それに合わせて、工藤が香織の肩を自分に寄せた。 「こうやって…2人で座ってると…安心する。」 「…そう言って貰えると、嬉しいですね。何もかも…1人でやる必要なんて、無いんです。まぁ、僕みたいに1人で暮らしてたら、やらざるを得ないんですけどね。」 「…ねぇ、愚痴って良いかな?」 「どうぞ。」 「私はね…結婚して…幸せになるんだぁ…って、憧れてた。夫と私…2人で1つ。そうやって幸せになれるんだって思ってた。そこに、子どもが出来て…3人で楽しくって…。そんなのは妄想だった。」
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