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そんな香織の話を聞いていた工藤が笑った。
「ちょっと、何笑ってるのよ。」
「いや、すみません。笑うつもりは無かったんですけどね。」
「笑ってるじゃない…。」
そんな香織に工藤は言った。
「夫婦…2人で1つ…。そこだけ聞いて笑えたんですよ。」
「どうしてよ?何がおかしいの!!」
「夫婦は2人で1つになんか、なれませんよ。別々の2人が一緒になって…違う2人だからこそ、尊重し合える…それで初めて支え合える…そういうもんなんじゃないですかね?」
工藤の答えは的を得ていた。
「男も女も…生まれてから死ぬまで、1人なんですよ。」
その言葉で涙が出てきた香織。
「ねぇ…。」
香織が工藤にキスをした。
「私…酔ってなんか無いからね。酔った勢いなんかで…キスしないからね。」
「分かってますよ。」
そう言うと工藤の太腿に対面になって座った。
「本気に…ならないからね。」
「…分かりました。」
そう言ってまたキスをした。今度は濃厚なキスだった。
工藤は腰に手を回し抱き寄せる。
香織は着ていたジャケットを脱ぎ捨てた。
工藤は香織のシャツのボタンを、香織は工藤のスウェットを脱がせた。
「見たい?」誘ったのは香織。
「見たい…です。」
「ガッガリするかもよ?」
「どっちなんですか?見られたいんですか?見せたくないんですか?」
香織が後ろのホックに手を掛けようとするのを、工藤が外した。
片手で胸を隠し、外したブラを床に置いた。
工藤が隠していた腕をゆっくりと外す。
目の前に香織の胸が露わになった。
香織は視線を逸らした。
「綺麗…ですね…。」
「えっ…。」
工藤は両胸に顔を埋め、しばらく感触を確かめていた。
「こんなに綺麗なのに…ガッガリする…なんて、言わないで下さい。」
工藤が気づいた。
「この傷痕は?」
「…若い頃に手術したから…その傷痕。それがコンプレックスなの…。」
「コンプレックス…それは違うでしょ?」
「…じゃあ…何?」
工藤は胸と傷痕を見て笑顔で言った。
「これは…個性ですよ。」
「個性?傷痕が?」
「何でもマイナスに考えない方が良いです。傷痕なら、僕にも有りますよ。」
そう言って右腕の肘あたりに目立つ傷痕があった。
「それも…個性?」
その傷痕を見せた工藤の表情が変わった。
「これは…個性じゃなくて…ある意味、十字架…みたいなもんです。」
「十字架!?えっ!どう言う事?」
香織がそう言うとまた、香織の胸に顔を埋めた。
「今は…こうしていたい。」
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