Woman

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2人はベッドで…お互いを慰め合っていたのかもしれない。 「私…久しぶりだから…。」 「僕もですよ。」 昼間の工藤とはまた別の…工藤の顔を見つけてしまった。 「…ねぇ、私は工藤君から見たら…魅力ある?」 「あるから…抱いてるんですよ。」 「私の胸…綺麗って…ホント?」 「ホントに綺麗なんです。」 「抱きたかったら…言ってない?」 「好きだから…抱きたいから。言ったんです。」 毎日、繰り返されていた自宅の激務から解放された気がしていた。 繰り返し繰り返し…工藤は香織の胸に顔を埋め、キスし合っていた。 《…どうしよ…本気にならないって言ったのに…》 香織の脳裏に毎日会う工藤を、今後、どう接して行けば良いのか?迷っていた。 《…ダメだよ。本気になったら…。》 呪文の様に唱えていた。 香織の身体は…工藤を覚えてしまったのかもしれない。 いつもと違う光景...そこから外を眺めていた。 「落着きましたか?」工藤が香織に聞いてみた。 「...かなり、落ち着いたかも...。」 数時間前の自宅での出来事を忘れていた。 外を眺めていた香織が工藤に顔を向けた。 「本当に、ガッカリしなかった?」香織が工藤の目を見て言った。 「ガッカリさせたのは...僕の方では?」 「そんな事...ない。」 「だったら...良かったです。」 そう言って、工藤は香織を抱きしめた。 「何も...聞こうとしないよね?」 「聞いて良いんですか?」 抱き締められていた香織は頷いた。 「じゃあ...聞きましょう。どうしたんですか?あんな無茶な事をして。」 「家でね...今までずっと我慢してた...それが爆発したの。」 「それは...夫婦喧嘩...という事ですね?」 「あれは...夫婦喧嘩の域を超えていた。子どもも泣いていたし...。」 「その子どもの事まで忘れるくらいの喧嘩...だったんですね?」 自分のこれまでの出来事や思いを素直に話す事が出来た。 「結婚してて...工藤君とこんな事してるなんてね...。」 「後悔...してますか?」 「...今は...後悔してない。」 「僕も...後悔はしてませんよ。」 「心の拠り所...そんな場所が欲しかったのかなぁ...。」 「じゃあ、その心の拠り所....て場所に...なりましょうか?」 工藤の言葉に...心が動揺した。 「でも...実際、私は家庭もあるし...。」 「家庭があって...心の拠り所を持つ事はいけないことでしょうか?」 「工藤君は嫌じゃないの?」 「嫌...って?」 「だって、人妻だよ?」 「それが何か問題ですか?」 「今だって、家庭を放って...こんな事してる...。」 「それは今までの我慢の積み重ねが生んだことでしょ?」 「そうだけど...。」 「沈みかけた泥船に...それ以上の荷物を積んだら...どうなるか?それぐらいの事も分かってないんですか?」 工藤の言葉には説得力があった。 「沈みかけてたんだね...私。」 「毎日、見てますからね。僕は。」 そう言って香織の髪を撫でていた。 「誰だって...耐えたりしてるんです。ただ、その後のケアを怠ると...何処かで一気に爆発するんですよ。」 「...工藤君も爆発したりするの?」 「いや...僕は...逃げ出したんです。」 「...逃げ出した?」 「右腕の傷痕…それを背負って生きていくんですよ。
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