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自宅に帰ると…居た。
溜息をついて部屋の中に入り、身支度をしていた。
「…朝帰りかよ。良い気なもんだな。」
夫の言葉も無視していた。
「男でも…出来たのか?」
「はぁ?」
夫の言葉で香織の怒りが頂点に達した。
「あのさ…男が出来たのなら、とっくにこんな家…出て行ってるよ。」
夫が舌打ちをした。
香織も舌打ちをした。
香織はシャワーを浴びる為に脱衣所で服を脱いでいた。
そこへ…夫が入って来た。
「何してんのよ!!出ていってよ!!」
「…たまには…な?」
身体を触ろうとする手を跳ね除けた。
「汚ない手で触らないで!!」
その言葉に今度は夫の怒りが頂点に達した。
『バシッ!!』
「何なんだよ!!夫婦だろうが!!」
平手打ちされ、文句まで言われた。
頬が赤くなっていた。
香織は頬を抑えつつ、夫を睨みつけていた。
「…あのさ…アンタが何やってくれたのよ…。空き缶1つ、ロクに潰さない。こっちが大変なのを見てて、いつも知らん顔。挙げ句の果てに…叩かれて。」
その言葉で少し冷静さを戻した夫。
「…わ、悪かった。叩いたのも悪かった。」
そんな言葉は香織にはもう、必要の無い言葉。
《…血の味が…する…。》
唇を触った。口の中を切っていたのか?血が出ていた。
「なんで私が…ここまでされなきゃいけないわけ!?」
悔しいのと悲しいのと…怒り…どれもが入り混じっていた言葉は涙と共に出てきた。
香織の血を見た夫が我に返った。
「…悪かった!!本当に悪かった!!」
脱ぎかけた服を着た。
「…もう、私…ヤダ…。」
帰ってきたままの格好で夫の横を通り過ぎた。
「…おい!!ちょっと話そう…。」
「うるさい!!帰って来なきゃ良かった…。」
香織はバッグを持って家を出ていった。
悲しくて悲しくて…堪らなかった。
車に乗ると直ぐに出て行った。行き先は…分からない。
ただ無心に車を走らせた。
スマホに夫からの電話が何回もあった。
「…うるさい!!」
そう言って電源を切った。
電源を切って、ただ泣きながら運転していた。
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